低濃度PCBの確認は、①設備台帳を作る、②電気主任技術者等の管理下で銘板・型式・製造年を記録する、③油交換履歴を確認する、④メーカー情報で照合する、⑤判定できない油入機器だけ専門家が採油・分析する、の順で進めます。稼働中の高圧機器を自分で開けたり、無断で採油したりしてはいけません。コンデンサーなどの封じ切り機器も、確認のために穴を開けないでください。
製造年だけで「PCBなし」と確定することはできません。旧社名、型式・製造番号、絶縁油の交換・補充履歴までそろえてメーカーへ照会し、情報で判定できない場合に分析を検討します。低濃度PCB廃棄物の処分期限は2027年3月31日です。確認だけで期限を満たすわけではないため、該当した場合の更新・保管・届出・処分も同時に計画してください。
| 確認項目 | 主な確認先 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 機器の所在 | 単線結線図・設備台帳・現地 | 使用中・予備・保管を一覧化 |
| 銘板情報 | 既存写真または安全を確保した現地確認 | メーカー・型式・製造番号・製造年を記録 |
| 油の履歴 | 工事記録・請求書・保守会社 | 交換・補充日と油の由来を記録 |
| PCB該当性 | メーカー情報・JEMA窓口 | 照会回答と判定根拠を保存 |
| 情報で不明 | 専門家・分析機関 | 採油可能性と分析方法を確認 |
最初に安全を確保する|稼働中の高圧機器を自分で開けない
最初の結論は「調査の前に、電気主任技術者等へ連絡する」です。キュービクル内部には高電圧の充電部があり、外観撮影だけのつもりでも感電事故につながります。経済産業省も、需要家が自ら高圧受電設備内を撮影し、感電した事例を示しています。
- 既存の年次点検写真、設備台帳、単線結線図を先に確認する
- 現地確認は電気主任技術者、保安法人・管理技術者等と計画する
- 必要に応じて停電し、検電・接地・保護具など所定の安全措置を取る
- 扉の開放、接触、採油は有資格者・専門事業者の管理下で行う
- 封じ切り機器を自己判断で開孔しない
既存写真で銘板が読めるなら、重複して危険な現地作業をする必要はありません。画質や機器の対応関係が不明な場合だけ、次の停電点検に合わせて「機器全景・銘板・設置場所が分かる写真」を撮影します。点検記録の整理方法は、キュービクル点検報告書の見方も参考にしてください。
調査対象を漏らさない|使用中・予備・倉庫保管を一つの台帳へ
キュービクル内の変圧器と高圧コンデンサーだけでなく、取り外して保管中の機器や機械に内蔵・付属するコンデンサーも確認対象にします。「現在使っていないから対象外」とは限りません。
- 受変電設備:変圧器、電力用コンデンサー、リアクトル、計器用変成器など
- 工場設備:溶接機、工作機械、モーター等に内蔵・付属する低圧コンデンサー
- 建物設備:X線装置、エレベーター、分電盤等に付属するコンデンサー
- 予備品・撤去品:倉庫、機械室、電気室、屋外保管場所にある機器
- 台帳外機器:増設、移設、統廃合で図面に反映されていない機器
拠点、建物、電気室、盤、機器の順に管理番号を付け、単線結線図と写真をひも付けます。設備種類を整理したい場合は、キュービクルを構成する機器で名称と役割を確認できます。
銘板で記録する8項目|写真は全景・銘板・設置位置の3点セット
銘板では、メーカー名だけでなく型式・製造番号まで読める状態で記録します。同じ製造年でも機種や製造番号の範囲で判定が分かれる場合があるためです。古い銘板は旧社名で表示されていることがあります。

- 機器名称
- メーカー名・旧社名
- 型式
- 製造番号
- 製造年
- 容量・定格
- 絶縁油量・油種(表示がある場合)
- 使用中・停止中・保管中の区分
写真は、①どの機器か分かる全景、②文字が読める銘板の正面、③盤・室内での位置が分かる引きの写真を残します。反射で読めない場合は角度を変え、画像加工で数字を推測して補わないでください。読めない文字は「判読不能」として、メーカー照会時に現物再確認の要否を相談します。
製造年の目安|1993年・1990年は一次スクリーニング
絶縁油の交換が可能な変圧器等は1993年以前、電力用コンデンサー等の封じ切り機器は1990年以前を、調査対象を絞る目安として使います。ただし、これは「その年以前ならPCB含有」「それより新しければ絶対に非該当」という一律判定ではありません。
| 機器区分 | 一次スクリーニングの目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 変圧器など絶縁油を採取できる機器 | 1993年以前の製造 | 油の交換・補充があれば年式だけで判定しない |
| 電力用コンデンサーなど封じ切り機器 | 1990年以前の製造 | 穴を開けず、型式・製造番号をメーカーへ照会 |
| 年式・型式が読めない機器 | 不明として管理 | 非該当にせず、専門窓口へ確認方法を相談 |

銘板の製造年と設備台帳の導入年が異なる場合は、銘板を機器固有情報として記録し、更新・移設履歴も併記します。設備の更新時期を併せて考える場合は、キュービクルの耐用年数と更新判断も確認してください。
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メーカー照会の方法|旧社名を現在の窓口へつなぐ
メーカー照会では、銘板写真と機器固有情報を一度に送り、回答日・回答部署・判定根拠まで保存します。古い銘板の会社名が現在と異なる場合は、日本電機工業会(JEMA)の「変圧器・コンデンサ等製造メーカー問い合わせ先」と旧社名対照表を使います。
| 銘板にある旧社名の例 | 現在の照会先の例 | 照会時の注意 |
|---|---|---|
| 九州変圧器 | キューヘン | 社名変更・事業移管があるため、連絡先はJEMAの最新一覧で再確認。電話番号を古い資料から転記しない。 |
| 四国変圧器 | 四変テック | |
| 大阪変圧器 | ダイヘン | |
| 東京芝浦電気 | 東芝 | |
| 日本コンデンサ工業 | ニチコン | |
| 富士電機製造 | 富士電機 |
JEMA「変圧器・コンデンサ等製造メーカー問い合わせ先」は更新されるため、照会の都度確認してください。上表は旧社名対照表からの代表例で、網羅表ではありません。
照会前にそろえる7点
- 銘板写真と機器全景写真
- メーカー名・旧社名
- 機器種類と型式
- 製造番号
- 製造年
- 絶縁油の交換・補充履歴
- 使用中・廃止・保管の状態と連絡先
メーカーから「対象外」「対象の可能性あり」「製品情報だけでは判定不可」のどれに当たるかを確認し、メールや書面を設備台帳へ保存します。口頭回答だけの場合も、日時・部署・担当者・伝えた機器情報・回答内容を記録してください。
油交換・補充履歴を確認する|年式判定を狂わせる重要情報
変圧器の絶縁油を交換・補充している場合、機器の製造年だけでは現在の油のPCB濃度を判断できません。メンテナンス時に別の油が入った履歴があれば、由来、作業日、作業会社、油量、証明書の有無を確認します。
- 油交換・補充を行った年月日
- 作業会社と工事報告書
- 新油・再生油など油の由来
- 補充量または全量交換か
- 過去のPCB分析結果と試料採取日
- 対象機器の製造番号との対応
書類が見つからない場合は「履歴なし」ではなく「履歴不明」と記録します。統廃合前の工場、旧所有者、保守会社、電気工事会社の記録も確認し、推測で非該当にしないことが重要です。
分析が必要なケース|メーカー情報で判定できない油入機器
メーカー情報と油履歴で判定できず、絶縁油を安全に採取できる変圧器等は、専門家と分析を検討します。採油の可否、停電、漏油防止、採取容器、試料と機器番号の対応を事前に決め、環境省が示す測定方法に対応できる分析機関へ依頼します。
- 使用する測定方法と定量下限を見積書・報告書で確認する
- 採油者、採油日時、機器番号、封印・搬送を記録する
- 分析結果の単位がmg/kgであることを確認する
- 機器台帳と分析報告書を一対一でひも付ける
- 再分析が必要になる条件を事前に確認する
絶縁油中PCBの分析は、一般的な濃度計量証明の対象外とJEMAが案内しています。「計量証明事業者だから自動的に適切」とせず、対象試料、採用方法、必要な精度、報告書様式を確認してください。分析機関は、JEMAのPCB分析機関情報から確認できます。
封じ切りコンデンサーは無理に採油しない
電力用コンデンサーなどは通常、使用中の状態で容易に採油できません。確認のための開孔は、感電、漏油、設備損傷につながります。まず型式・製造番号をメーカーへ照会し、判定できない場合は、更新・撤去後の扱いを含めてPCB専門窓口、処理事業者、所管行政へ相談してください。
分析結果の読み方|0.5mg/kgと5000mg/kgの範囲を確認
電気機器の絶縁油では、PCB濃度が0.5mg/kgを超え5000mg/kg以下のものが、低濃度PCB汚染絶縁油を含む電気機器の範囲です。数値だけを切り取らず、試料がどの機器の絶縁油か、単位、測定方法、報告書の判定を確認します。
| 絶縁油中PCB濃度 | この記事での整理 | 次の確認 |
|---|---|---|
| 0.5mg/kg以下 | PCB廃棄物に該当しない目安 | 報告書を台帳に保存。通常の廃棄物処理ルールは別途確認 |
| 0.5mg/kg超~5000mg/kg以下 | 低濃度PCB汚染絶縁油を含む電気機器の範囲 | 届出、保管、更新・撤去、認定処理施設への処分を計画 |
| 高濃度PCBの可能性・判定不能 | 低濃度前提で処理しない | メーカー、所管行政、PCB専門窓口へ個別相談 |
0.5mg/kg以下でも、廃油・機器を自由に捨てられるわけではありません。廃棄物処理法、委託契約、マニフェスト等の通常ルールに従います。また、PCB廃棄物全体では廃油の種類等により濃度区分が異なる場合があるため、上表は変圧器等の電気機器に入った絶縁油の確認として用いてください。
低濃度PCBが見つかった後|確認と処分を同じ工程表で管理
該当が判明したら、使用中機器の更新・廃止、行政手続き、適正保管、収集運搬、処分を期限から逆算します。確認済みでも、2027年3月31日までに処分を完了しなければ期限対応は終わりません。
- 電気主任技術者等と使用状況・停止可否を確認する
- 電気関係報告規則に基づく届出の要否と提出先を確認する
- 廃止後はPCB特別措置法に基づく保管・届出を所管自治体へ確認する
- 漏えい、転倒、混載を防ぎ、掲示・容器・保管場所を整える
- 環境大臣認定の無害化処理認定施設等の受入条件を確認する
- 許可を持つ収集運搬業者と処理委託契約・日程を確定する
- 届出控え、契約書、マニフェスト、処理証明を台帳へ保存する
期限直前は、現地調査、停電調整、機器納期、搬出、処理施設の受入が重なります。分析結果を待ってから更新計画を始めるのではなく、「該当した場合」の工程と予算も並行して準備してください。
低濃度PCB確認の7ステップ
安全と証拠性を両立するには、調査範囲と記録様式を決めてから現地確認へ進みます。次の順序なら、同じ機器を何度も確認する手戻りを減らせます。

設備担当、電気主任技術者等、保守会社、PCB担当の役割を決め、停電・立入・撮影・採油の条件を確認します。
単線結線図、設備台帳、点検報告書、更新履歴、工事記録、過去の分析結果を集めます。
使用中、予備、撤去・保管中、機械内蔵を含め、拠点・設置場所・機器番号で一覧化します。
メーカー、型式、製造番号、製造年、定格、状態と、油の交換・補充履歴を記録します。
旧社名を現在の窓口へつなぎ、機器固有情報と写真を送り、回答と根拠を保存します。
情報で判定できない採油可能機器について、専門家が安全計画を立て、適切な方法で採油・分析します。
非該当根拠または分析結果を保存し、該当機器は更新、届出、保管、処分完了まで進捗を管理します。
現地確認・メーカー照会チェックリスト
現地へ行く前に、次の15項目を一つの管理表にします。空欄は「なし」ではなく「未確認」とし、担当者と確認期限を設定してください。
- 拠点・建物・設置場所
- 機器管理番号
- 機器名称
- メーカー名・旧社名
- 型式
- 製造番号
- 製造年
- 容量・定格
- 絶縁油量・油種
- 使用中・停止中・保管中
- 油交換・補充履歴
- 銘板・全景・位置写真
- メーカー照会日・回答・根拠
- 採油日・分析報告書番号
- 判定後の届出・更新・処分期限
よくある質問
迷ったときは「機器を開けず、不明として記録し、電気主任技術者等と専門窓口へ相談」が原則です。年式や見た目だけで非該当にしないでください。
- 1994年製の変圧器なら低濃度PCBはありませんか?
-
年式だけでは確定できません。1993年以前は調査を優先する目安ですが、メーカー、型式、製造番号、油交換・補充履歴を確認し、メーカー情報に従ってください。
- 銘板が読めない場合はどうしますか?
-
非該当にせず「判読不能」と記録します。既存台帳、点検写真、工事記録、旧所有者・保守会社の資料を探し、必要な現地再確認を電気主任技術者等と計画します。
- 稼働中の変圧器から自社で油を採れますか?
-
自己判断で採油してはいけません。感電・漏油・設備故障の危険があります。電気主任技術者等と専門事業者が停電や安全措置を含む計画を立てます。
- コンデンサーも分析すれば確実ですか?
-
封じ切りコンデンサーは使用中に容易に採油できません。開孔せず、まず型式・製造番号をメーカーへ照会し、判定できない場合は更新・撤去後の扱いを専門窓口へ相談します。
- 油を交換していればPCBはないと判断できますか?
-
判断できません。交換前の残油や補充油の由来などを確認する必要があります。工事日、作業会社、油の種類・量、証明書を集め、メーカーまたは専門家へ伝えます。
- 0.5mg/kg以下なら何も手続きせず捨てられますか?
-
いいえ。PCB廃棄物に該当しない目安でも、通常の廃棄物処理法上の委託・マニフェスト等は別途必要です。分析報告書を保存し、適正な処理先へ委託してください。
- メーカーが廃業・事業移管している場合はどうしますか?
-
JEMAの最新問い合わせ先と旧社名対照表で承継先を確認します。見つからなければ、電気主任技術者等、PCB専門窓口、所管行政へ機器情報を示して相談します。
- 調査が終われば2027年3月31日の期限対応は完了ですか?
-
完了ではありません。該当機器は更新・廃止、必要な届出、適正保管、収集運搬、処分まで期限内に完了させる必要があります。確認と処分を同じ工程表で管理してください。
一次情報・確認先
制度、測定方法、メーカー窓口は更新されるため、照会・発注時点の最新版を確認してください。本記事は2026年8月21日に次の一次情報を確認しています。
- 環境省「低濃度PCB廃棄物の早期処理に関するガイドライン」
- 環境省「低濃度PCB廃棄物の早期処理に関する実務資料」
- 環境省「低濃度PCB廃棄物の判定方法」
- 経済産業省「PCB含有電気工作物について」
- 日本電機工業会「変圧器・コンデンサ等製造メーカー問い合わせ先」
- 日本電機工業会「変圧器等への微量PCB混入可能性に関する調査・判別・対応」
- 日本電機工業会「PCB分析機関」
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まとめ|安全な銘板確認から始め、判定根拠を台帳に残す
低濃度PCBの確認は、設備を開ける作業ではなく、情報を漏れなく集めて判定根拠を残す作業から始まります。使用中・保管中を棚卸しし、電気主任技術者等の管理下で銘板を確認し、油履歴とメーカー情報を照合します。情報で判定できない採油可能機器だけ、専門家による分析へ進めてください。
銘板が読めない、旧社名の照会先が分からない、油履歴がない、封じ切り機器で判断できない場合は、非該当と推測せず専門窓口へ相談します。該当した場合は、2027年3月31日の処分期限から逆算し、更新・届出・保管・処分まで一つの工程表で進めましょう。


